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鎌倉市観光協会に新スタッフとして早田律子（石田ひかり）がやってくる。長倉和平（中井貴一）に挨拶するが、彼の名前を聞いた瞬間、律子の脳裏には、亡き父が遺した「未亡人」系の成人雑誌やDVDの箱に書かれていた「くらちゃん」の記憶がよぎる。

一方、胸の動悸に不安を感じ病院を訪れた吉野千明（小泉今日子）は、爽やかな医師・成瀬千次（三浦友和）と出会う。千明は成瀬の優しい物腰に惹かれ、成瀬も千明の顔が亡き妻にそっくりなことに驚き、心を動かされる。

和平は律子とともに観光地を巡りながら、彼女の「今日が私の第二の人生のスタートです」という言葉に、自身の定年後の再任用を重ねて感じ入る。律子をそっと応援する気持ちが芽生える。

そのころ千明は病院を後にし、偶然入った蕎麦屋でまたもや成瀬と相席に。自然な会話の中で、成瀬の誠実な人柄に触れた千明は、さらに心を惹かれていく。

和平は、今や課長となった田所勉（松尾諭）の仕事の愚痴に付き合い酒を酌み交わす夜。一方の千明は、友人の荒木啓子（森口博子）と水野祥子（渡辺真起子）と女子会を開き、成瀬の話題で盛り上がる。

その頃、長倉家の人々もそれぞれの時間を過ごしていた。万理子（内田有紀）は「月9企画募集」のチラシをじっと見つめ、水谷典子（飯島直子）はベランダで煙草をくゆらせ、ひとり思索に沈む。真平（坂口憲二）は家族との穏やかなひとときを大切にしながら、日常を噛みしめていた。

そして朝。古民家カフェ「ナガクラ」で、いつものように顔を合わせる千明と和平。日常の中に静かに流れる新たな風、それぞれの「第二の人生」が、また動き始める。

テレビ局のドラマ制作部でヒットシリーズを手掛けるゼネラルプロデューサー・吉野千明（小泉今日子）は、もうすぐ60歳。

定年を迎える社員向けのセミナーに参加するも、話題は「セカンドライフ」。仕事一筋で生きてきた彼女には、退職後の人生がまるでイメージできず、取り残されたような気持ちになる。

一方、鎌倉市役所観光推進課の長倉和平（中井貴一）は、定年後も「指導監」として働いていた。観光客の増加、相変わらずの残業、年齢とともに言うことを聞かなくなった身体。日々ストレスと疲労を抱えていた。

そんなふたりは、極楽寺駅でまたもばったり出会う。実は自宅がお隣同士。たわいもない会話を交わすうち、千明は「気の合う誰かが隣にいてくれたらいい」と心から感じ、思わず笑みをこぼす。

その思いの背景には、2020年――コロナ禍の記憶があった。千明は感染し、孤独と恐怖の中にいた。そのとき、壁越しに声をかけ続けてくれたのが和平だった。
「治ったら何がしたいですか？」
「長倉和平を木っ端微塵に論破する」
そう応じて笑い合った、あの夜。千明にとって和平は、今やかけがえのない存在だった。

そして、2025年――。
朝から鎌倉の古民家カフェ「ナガクラ」では、店長で和平の弟・真平（坂口憲二）、和平の娘・えりな（白本彩奈）が働いている。

千明や和平はもちろん、千明の専属脚本家で和平の妹・万理子（内田有紀）、専業主婦で平凡な日々に退屈している長女・水谷典子（飯島直子）も集まり、何気ないけれど愛おしい日常が続いていた。

第二の人生を、誰と、どう生きるか。答えは“いつもの日常”の中に――。